DiabloⅣを遊んで
オープンβ、サーバースラム、アーリーアクセス期間をプレーしてソロ専Lv75時点の感想。PoEとの比較多め
Contents
比較的ポジティブな感想
キャンペーンと大まかなストーリー
ACT終了までテンポ良くレベルが上がり、使えるスキルも増えていき、それを試す為の多様なボスとの戦闘が楽しめる。
スキルポイントの振り直しもレベルの上昇と共にコストが増大していくものの比較的容易で、パラゴン(Lv50~)以前までは気軽に異なるビルドに触れやすい。
地域によってモンスターの最低レベルが設定されてはいるものの、メインクエストを最短でこなしても良いし、サブクエストやサイドダンジョンに延々寄り道する自由度もある(馬に乗れる様になるのがACT4からなので、最初のキャラではそこまでは駆け抜けた方が以降快適ではある)。
ストーリーも何も考えずに追う分には入り込めるし、感動ドラマを押し付けられる事も無く救いの無いダークファンタジーの世界を楽しめる。
ただ少し冷静になろうとすると色々気になってしまう所はある——メインキャラクターの唐突な負傷や死とかソウルストーン周りとか。
下2つの画像はアメリカのファンタジードラマであるゲームオブスローンズを皮肉ったもの
原作“氷と炎の歌”の範囲を逸脱してドラマオリジナルの脚本になった辺りから緩急を考えない刺激的な展開ばがりが続き、核心の部分が雑にかつ怒涛の勢いで片付けられた事で失笑を買った。DiabloⅣはそもそもからしてここまで複雑でも無いし落差も大きくは無いけれども、次第に雑になっていくという点でこれを思い出した。MtG(ストーリーだけ追ってる)然り、世界的コンテンツには相応の脚本家を付けて欲しいと常々思う。
ビルドの適度な複雑さ
スキル数も多過ぎず、リソース充填スキルとリソース消費スキル、クールダウン、スキルタグ等の存在からゲーム内のツリーを眺めているだけでも効果やシナジーを把握し易く、外部の情報に頼らず自分でキャラを作っていくハードルは比較的低い——せいぜいAspect一覧をゲーム外で把握する必要があるかなくらい。
これがPoEの場合だと、スキルの正確な挙動をネットで調べたり、PoBでDPSの高くなるサポートジェムやノードを確認したり、膨大なアイテムの中からマッチする物を探したり、クラスタージュエルのmodを確認したり……それらの前提として各価の閾値やailmentの仕様やresist低下とpenetrationの違いとかcurseの挙動とかあらゆる情報を把握している必要があって、独自でキャラを組み立てる難度があまりに高い。結果として恐らくプレイヤーの大半はシーズン毎に発表される有名プレイヤーのビルドTier一覧を参考にして、それらの優秀なビルダーの投稿をコピペする事になる。
尤もネットが普及した昨今、それを最大限に活用するのは時代の流れだとも言えるし、大筋を模倣しても細部の独自性や調整を施す事はPoEでも可能だし、新しいビルドや派生が考案されたりもするから、価値観と好みの問題でもあるけど、
少なくともこちらの方が大衆向けであるのは確かな事だと思う。
例えば自分の場合PoEでは5,6リーグ目にビルドガイドも無いninjaを見ても誰もやってないオフメタスキルメインで組み立ててかなり苦労した末T16Rare Mapを40% Delirious程度で周回するのが限界だったけど、初プレーのDiabloⅣでは近い条件だとしてもそういう苦労をする気配は今の所は感じない。
他人との適度な距離感
純然としたMMOを10, PoEのMMO度を3とした時、DiabloⅣのMMO度は5くらいだと思う。基本はソロプレーで、主要な街中には幾らかのプレイヤーが居て、フィールド上で出会ったプレイヤーと共闘したり出来る。古代のMMOには必ずと言っていいほど横殴りとか狩場やモンスターの独占みたいな問題が存在していてプレイヤー間の争いの火種となっていたけれど、このゲームの場合戦闘中のモンスターを他人に攻撃されても一切デメリットが無いので、他人の存在がストレスにならない。2023年のゲームだなと思う。
現状までの自分の様に積極的な交流を図らない場合、他人と遭遇するのは街中, ヘルタイド, ワールドボス, ダンジョン前くらい。ヘルタイドとワールドボスは素材の為にたまに行く必要はあるものの義務レベルでは無いし、人の存在を感じつつもそのマイナス面に煩わされる事が無い。
1点、ワールドチャットが存在していないのはこの手のゲームとしては珍しいというか、個人的には初心者の戸惑いやアイテム自慢や業者の宣伝をたまに目の端で確認するのも嫌いじゃ無いのだけれども。
ネガティブめな感想
エンドコンテンツ
ナイトメアダンジョンはPoEのMapをパクって10段階くらい劣化させたもの。
・紋章を使った後対象のダンジョンまで毎回走る必要がある
これは6/17のCampfireにてダンジョン前まで飛べる様になる事が発表済。
ウェイポイントとウェイポイントの中間みたいなダンジョンも散見されるし本当に面倒臭かった。
・紋章のAffix
デメリット効果がただただストレスでしかないうえやたらと強力だったりする。
死んだモンスターが確定でパルスを放って来たり、約25秒に1回雷が降ってくるのを避ける為展開されたバリアに入る事を強要されたり、妙な岩がずっと着いてきて当たると攻撃して来たり、エリートが延々凍らせて来たり。これらを含め3~5つ必ず付与されるデメリット効果は唯々デメリットでしか無く何もメリットが無いので、予めビルド毎にキツイ紋章を砕くなり選別する事になる。
延々と追ってくるうえ先回りまでしてくる謎の岩、悪意のあるローリング・ストーンズ
PoEならデメリット効果は必ずドロップの質や量を向上させてもくれるし、優良なMapに危険なmodが付いてもリロールしたり他人に売却したり出来る。
・紋章インベントリの狭さ
ただでさえ狭い上エリクサーと共用。その為余計に紋章の選別が面倒臭くなる。
PoEなら専用タブ(1500円くらい)でMapTier毎に自動整理してくれるし、124マスor576マスのスタッシュをMapで満たして簡易検索機能やregexを使って一括で危険なmodを除外したりして、問題の無いMapを数十数百まとめて作っておく事が出来る。
・ギミック
これはナイトメアがとか関係なく、ダンジョンのギミック自体が味気ない。先に進む為に、別方向に設置された複数の石を取ってくるか、複数のエリートを倒すか、エリア内の全てのモンスターを倒すかを強要される。
PoEのMap内では10年に渡って開発されてきたそれ自体が1つのゲームになりうる程の多様なギミック(リーグ要素)に触れる事が出来るし、しかしそれらによって道中が妨害される訳でも無いので、全て無視して一直線にボスを倒す手段を取る事も出来る。
尤も「全てのモンスターを倒せ」に関してはPoEでも時々遭遇するやつで、全てのMagic以上とNormalの95%とかじゃダメなのかなと個人的に思っていたりする。
・レイアウト
全体として通路が細く開けた場所が少ない。
PoEにも細長い通路が複雑に入り組んだMap, 例えばまんまMazeとかDungeonとかあってその辺は自分も嫌いだけど、あちらは100種類以上あるレイアウトの1つに過ぎないのでシーズン毎に1回クリアすれば後は行く必要が無いし、障害物の少ない開けたフィールドの中に2,3つの部屋があるとか、そういう引っ掛かりにくい快適なMapも複数ある。
・報酬
後述の様にグリフのレベルを上げる為行かざるを得ないものの、それを除いた報酬は特に何も無い。クリア時申し訳程度にレア以上の装備を2つくれるけど、negative affixの事を考えてもグリフ抜きならエリートの多い普通のダンジョンに行った方が良い様に思う。(但し現状の自分がNMD25~30程度までなので、高Tier限定で出現するユニークとかはあるかもしれない)
PoEならギミック(リーグ要素)をクリアする事で、そのリーグ要素毎の限定アイテムが入手出来たりするし、その中には高額・希少・強力なアイテムも多数含まれるし、難易度を上下させる事で報酬もスケーリング出来たりする。
一応エンドコンテンツとしてはMap一辺倒になるPoEと違って、DiabloⅣの場合飽きたらヘルタイドとかワールドボスとかレギオンとか囁きとかPvPエリアとか異なるコンテンツを楽しむ事は出来る。
とはいえ難易度が最もスケールし続けるのはNMDで、何よりグリフのレベル上げが現状NMD限定なのでキャラ強化の為には絶対に行く必要がある。
Lv15のグリフ、強力なので育てざるを得ない
エンドコンテンツを延々と遊び続ける事に焦点を当てるのならば、現状はDiabloⅣでは無くPoEをやる方が間違いなく100%絶対に良い。
UI
これは今後の改善が充分見込める部分だとは思う。既に先日宝石が素材タブに収納される様になる事は発表された。
とはいえインベントリとスタッシュの狭さ、何故武具と指輪と宝石が一律同サイズなのとか、何故ジャンク指定は可能なのに保護指定は無いのかとか、ユニークの色分かり辛いとか、ワード指定の検索機能は無いのかとか、パラゴンの一括振り戻しは無いのかとか、重要なパラメータがすぐに確認し辛いとか、まあ現状だと色々と気になるし足りない。
アイテムとトレジャーハントと経済
再序盤はレアが嬉しいし、中盤まではレジェンダリーが出て喜べるし、ユニークも最初の数個は興奮する。
でもこの手のトレハン要素のあるゲームに付き物の超希少なアイテムは本当に限られてるし、露骨に壊れてるこいつは世界中で遊ばれているにも関わらず極端に報告が少ない。
こいつにしてもそりゃ欲しいは欲しいけど、無難に超強くて仕方なくこれになるというだけだし
レベルが低いうちから入手確率のある超レアアイテムは無さそうだし、経済が無いから高額アイテムみたいな概念も無いし、前作から導入されてるらしいスマートルートとやらで他クラスのアイテムは殆ど出ないから「これが出たからこのクラスをやってみよう」とならないし、探し追い求めるべきモチベーションとなるアイテムが本当に無い。
そもそもとしてユニークの数が圧倒的に少ない。少ない上、ビルドを決定付けうるくらい強力な物(これはあまりやり過ぎてもだけど)とか、ビルドを考えさせられる面白い性能の物とかそういうのが殆ど無い。
例えばこれはまだ試してないものの面白そうアローレインやってみたいと思ったかな
ことデータ量に関しては10年運営してるPoEと比べるのは酷だと思うしこちらも少なくとも量は確実に増えていくだろうけど、まあPoEの創造性とトレハン欲を刺激される(かつ強力な)これらのアイテムの質を見習って欲しい。
レギオンで出たこの幽霊馬が今の所一番嬉しかったな。
その他雑多な感想
オープンワールドの必要性
リリス像を探して世界中を駆け回るのは、1回きりだし個人的には楽しめた。
ただ現状のこのゲームがオープンワールドである必要性があるのかな?というのは正直疑問。
あのボスとはもう戦えないの?
キャンペーンが面白かった要因の1つは多様なボスとの戦闘にもあったと思う。
伝説のDiabloⅡなんかは確か最終的にそれらを延々周回するゲームと聞き及んでいたのだけれども、Ⅳで最終的に周回するダンジョンのボスはどこの馬の骨かも分からない悪魔達で、それも違うダンジョン間でもボスは同一だったりする。
上項と合わせて、これなら古来の、各Act各エリア毎を選んで各人が作った部屋に気軽に参加して共にボスを倒してを繰り返す、MO形式でも良かった様な。
レベルスケーリング
同社のWoWでもやってる仕様。モンスターのレベルが固定の場合、基本的に一度適正を上回った後はその場所に行く機会が無くなるし、これのお陰で世界中いつどこに行っても常に一定の緊張感が保証されているのは良い事。
反面戦闘の手応えは均一になりがちで、装備を更新する事で余裕が生まれるというよりは、装備を更新しないと余裕が無くなっていく。
MMO出身としては昔苦労させられた場所へ大幅に強くなった装備で無双しに行くのも、触れられたら即死級の分不相応の場所に観光しに行くのも一つの楽しみ方だと思っているので、正直味気無さを感じてしまうけど、まあこのシステムに触れた時間が短いので慣れの問題はあるかもしれない。
MTX
一通りゲーム内ショップには目を通したうえで、個人的にはcosmeもmountも今の所欲しいとは思わなかった。
ちなみにPoEではまともにプレーする時はだいたいスキルエフェクトとかペットとか幾つか買ってる。
何れも血液と臓器と死体が溢れるゴア表現全開のダークな世界観ではあるものの、PoEの世界には幻想的なエフェクトやユニークなペットも多数入り込んでいて、それが特別世界観を壊している様には感じられない。
PoEで多分一番最初に単体で買ったペット(Sunprism Cat)、DiabloⅣの世界には存在出来なさそう
DiabloⅣは原点回帰を目指したこともあってか、スキルエフェクトは地味だし、乗り物も馬のみ。剣が炎や雷光のエネルギーを纏っているとか、鎧から魔術的な煙が発生しているとか、天体を模したクリアパープルの翼を生やすとかそういうのはあまり無いし、これから派手にはなっていくだろうけど、あまりやり過ぎると往年のファンに怒られそうで難しそうだなあと思う。かくいう自分も例えば指輪物語に↑の猫みたいなのが出てきたら萎えるわーとか言ってると思うし。
ビルドの多様性
複雑さはこのくらいでも良い気がするけど、やはりやれる事の幅はもっと欲しい。大まかにはどのクラスも3パターン程度になりそうな割に、使用スキルも随分偏っている様だし。
調整の方向性
アーリーアクセスを含めリリース後2週間ちょっとの現時点で、既にスキルやダンジョンのモンスター密度等が複数回ナーフ済。
PvPがメインじゃないうえシーズン制、しかも経済も無いこのゲームがバランスに捕らわれ過ぎる理由はそうあるのだろうか。
ただオープン直後のゲームが実質的な有料ベータ期間になっているありがちな現象に関しては、個人的にはもう最初から「発売直後はプレイヤーの皆様の声を元に調整を図る試運転期間であり100%のクオリティを保証致しかねます」と公言するのを慣例にして欲しい。
どんなに有能な人員だろうがたかだか数十人か数百人でテストした所で、その数百数千数万倍の集合知を凌駕するなんて事はそう無いだろうから。
総評
DiabloはⅡ,Ⅲ共にリアルタイムで存在を知って情報を得つつも遊ぶ機会の無かった、そしてこれの影響を大きく受けたゲーム複数に触れる機会のあった自分にとって少し特殊なゲームで、Ⅳの今回初めてリアルタイムに参加出来た事は良い経験だった。
そのうえで、稀代の情熱と純粋さによってⅠやⅡで打ち立てられた伝説は疾うの昔に消え去り、大方の前評判通り凡作たるⅢの後継がこのⅣであるという事も自身の目で確かめる事が出来た。
社内セクハラ、BlizzConでの失言、生みの親への侮辱等は熱心な情報収集家でも無い自分にすら伝わっていたし、最近は同社の別IPの悪評等も聞く。自分は所詮他所の会社の内部事情とは関係無い一庶民に過ぎないし、そういう冷淡さも意識的に持つようにはしているけれども、やはり腐った有機物から生まれる無機物は相応の状態で、これに関しても「私には無関係」では通らなかったという訳だ。
皮肉を連ねたものの自分はまだPoEを遊ぶと思うし、その対抗馬としてDiabloⅣには張り合って欲しいのでこちらも応援しているし、引き続きゲームとコミュニティを観察していくスタンス。ある程度膿は出て、莫大な資産と(元の人員は失ったとはいえ)積み重ねがあって、今作も下地の部分はよく出来ているから、(大分抜本的な改変は必要だとしても)Ⅳが最後まで面白いゲームになる可能性は充分にあると感じたのでした。